まだ冬の装いの高野山町石道

目次

NHK 大河ドラマ「真田丸」で盛り上げている九度山から高野山まで町石道(ちょういしみち)を歩いて来ました。このコースに危険なところはなく、長距離ではありますが純粋に山歩きを楽しめました。特に出だしの紀ノ川を一望できる柿畑はとても気持ちが良かったです。

高野山は弘法大師が開いた信仰の山です。そのため町石道は、初詣として歩きたいと考えていました。しかしこのコースは、コースガイドでの歩行時間が 6 時間半な上にスタート地点の九度山駅までの移動に時間がかかりスタートをあまり早くできないので、日の短い冬の間は避けていました。やっと 3 月に入り日もだいぶ長くなったので、早起きをしてほぼ始発の電車に乗って歩いて来ました。

町石道は高野山への参道ですので危険なところはなく、山の中を歩いているだけで満足してしまう私にはとても楽しいコースでした。特に前半の柿畑の中を歩く部分はずっと舗装道で山歩きではありませんが、とても眺めがよく慈尊院から展望台まで往復するだけでもちょっとしたハイキング気分を味わえます。

またこの他に高野山七口(注 1)と呼ばれるいくつものコースがあるので、それらも歩いてみたいものです。

景色と発見

町石(まちいし)

町石は、高野山金堂から何町離れているかを示す石柱で、丹生官省符神社の石段にある 180 番石まで約 109 m毎に置かれています。また金堂から反対側の奥の院に向かっても町石が置かれています。

高野山金堂まで180町であることを示す町石(180番石)。この町石は、丹生官省符神社への石段脇にあります。 最後の町石1地番石。ゴールの金堂はすぐそこです。

昔はそれぞれの町石のところで拝みながら登ったそうです。この話を聞いて、チベット仏教の五体投地をしながら巡礼する姿を思い浮かびました。

紀ノ川を見下ろす町石。 町石。 町石道と町石。 町石。

たまに町石と並んで石柱が建てられている事がありますが、これは里石という慈尊院から一里毎に置かれている石柱だそうです。

冬と春

3 月に入るとだいぶ春らしくなったのですが、この日は寒の戻りでかなり冷えました。紀見峠辺りから外は霜で白くなっており、九度山に着いたら吐く息が白くなるほどでした。

歩き始めても日陰には霜が残り、日陰のヒメオドリコソウには霜が付いていました。

霜が降りたヒメオドリコソウ。この日は吐く息が白くなるほどの冷え込みでした。

しかし日当たりの良い柿畑に出るとすっかり霜は融けて、ホトケノザが花を咲かせていました。

ホトケノザ。

この辺りではウグイスも鳴いていて、快晴の天気と合わさってとてものんびりした気分になってしまいました。

また傘木峠手前の湿地にはネコヤナギが花を咲かせていました。

ネコヤナギの花。

椿

町石道の初め、柿畑の辺りでは春の野草であるヒメオドリコソウやホトケノザが咲いていましたが、まだまだ花は少ない季節です。

そんな中で椿の花が所々に現れて目を楽しませてくれました。

九度山の道の駅に咲いていた大輪の椿。 椿の落花に飾られた丹生官省符神社の石段。 矢立に咲いていた椿。多数の花が付いていてとても見事でした。

ホウノキ

矢立を過ぎて歩いていたら、ホウノキの葉がたくさん落ちていました。

ホオノキの落ち葉。私の足よりずっと大きい。

ふと思ったのですが、パッと見た感じだと裏が上になって落ちている葉が多い気がします。

10 円玉の表と裏が出る確率が半々なのと同じく、確率的には葉も表と裏が半々のはずです。しかし裏が多いと感じるのは葉の裏側は表に比べて白く目立つからでしょうか? それとも葉の形に影響されて本当に裏が上になるように落ちる確率が高いのでしょうか?

この疑問、小学生の自由研究のテーマにいかがでしょうか?

厄除けかな?

金剛峯寺の門にヒイラギと里芋の串刺しが刺してありました。

金剛峯寺の門にはヒイラギと里芋の串刺しが飾られていました。何かのおまじない・厄除けなのでしょうか?

節分にヒイラギとイワシの頭を厄除けととして飾る風習がありますが、お寺なので精進料理と同じく動物を嫌って里芋をイワシに見立てているのでしょうか?

そう思ってみると、里芋が焼かれているような気もします。

この推測を確認するためにググってみると、やはり高野山では節分にヒイラギと里芋を厄除けとして飾るようです(注 2)。

皆さんのご家庭では厄除けの為、 イワシの頭とヒイラギの葉を戸口に挿すかと思いますが、 ここ高野山ではイワシではなく、 里芋を焼きイワシの頭に見立て、 戸口に挿します。高野山ならではです。 おにわはーそと!!ふくわーうち!! – こうやくん日記より引用

コウヤマキ(高野槙)

コウヤマキは、庭木や垣根によく使われるマキ(イヌマキ)よりも葉が細くて長いマキです。

高野山では、お墓や仏壇に花の代わりまたは花と一緒に高野槇をお供えするそうです。

コウヤマキ。

実際にお供えにするコウヤマキは畑で栽培されているのでしょうが、所々に大きなコウヤマキを見ることができます。

おみやげ(ミカン)

町石道の紀ノ川がよく見渡せる展望台から少し登った所に温州みかんミカンの無人販売がありました。一袋 100 円なので、おみやげにと買ってみました。

柿畑の中の無人販売所。ミカン一袋100円。

また、この少し先にも別の無人販売があり、こちらは「せとか」など他の品種も売っていました。まだ歩き始めで荷物を増やしたくなかったので、こちらは見送りました。

ただこのミカン、皮がシワシワで正直見てくれがよくありません。

無人販売所で購入したミカン。シワシワで見てくれは良くないが、とても甘くて美味しかったです。

100 円だし、まあ良いかと思ったのですが食べてみてびっくり。一番いい時期のミカンのように皮と袋がしっかりとくっついていて、酸味が全くなくとても甘いミカンでした。

結局高野山に付くまで休憩のたびに食べて、下山時にはこの 4 つしか残っていませんでした。こんなことならもう一袋買っておくんだったと後悔しています。

この季節はミカンでしたが、秋にはもちろん柿が並べられています。ただ柿は皮をむいて食べないといけないので、その場で簡単に食べられるミカンの方が嬉しいです。

おみやげ(草大福)

もうひとつのおみやげは、草大福です。大門のバス停向かいに餅屋さん(南峰堂)があり、酒まんじゅう、焼き餅、草大福などを売っています。どれも一つ 120 円だったかな。

この草大福は、原材料がもち米、もち粉、砂糖、よもぎ、小豆のみと超シンプルです。甘さもワタシ好みな感じで、家で作ったような小豆の味がしっかりする粒あんでした。消費期限は 3 日間ということでしたが、4 日目でもまだ柔らかいままでした。

もし大門から下るならば、これを行動食にするのがオススメです。

高野山にニホンカモシカ?

今回のハイキングで一番驚いたのは、野生のニホンカモシカを見たことです。今一つ自信はないのですが、ニホンカモシカだと思います。

ケーブルカーの高野山駅にバスで向かう途中、女人堂を過ぎてバス専用道路に入ってしばらくしたところで道端に灰色っぽい体毛をした生き物がいました。それを見て私の認識部位が出した結果はニホンカモシカでした。

この辺だと鈴鹿山脈に生息しているのは知っていましたが、高野山にいるとは全く思ってもいませんでした。しかしネットを検索すると、どうも高野山にもニホンカモシカが生息しているらしいです。

もう帰るだけだからとカメラをしまっていたのは失敗でした。やっぱりいつシャッターチャンスがあるかわからないので、常に撮影できるように用意しておくべきだと痛感しました。

ルートと注意点

2016-3-12
九度山駅(7:35-7:52)→ 慈尊院(8:20-8:30)→ 展望台(9:21-9:31)→ 六本杉峠(10:54)→ 古峠(11:12)→ 二ツ鳥居(11:16-11:31)→ 地蔵堂(11:49)→ 傘木峠(12:35)→ 矢立(13:28-13:32)→ 大門(15:36-15:47)→ 金堂(16:07-16:13)→ 金剛峯寺(16:39)
距離と時間
20.4km 約 9 時間(休憩を含む)
トイレ
九度山駅、丹生官省符神社から少し行った池、地蔵堂、矢立、大門(高野山山上には多数)。

注意点

このコースには、危険な場所はありません。また道標も整備されているので道も分かりにくいところはありませんでした。

一応滑り止めにチェーンスパイクを持って行きましたが、途中に凍結箇所はありませんでした。

またクマの目撃情報があるそうです。

ただ距離が長いので朝早くに出発する必要があります。そこで全てを歩くのではなく、紀伊細川駅から矢立に出て、そこから町石道を高野山まで歩く短縮コースもあります(注 3)。

ルート案内

九度山駅の改札出たらトイレ脇の階段を下るか右の車道を進み、歩道橋を渡ります。交通量の多い道で歩道が片側にしかないので、この歩道橋を渡って右側を進まないと交通事故に会います。

高野山を源流とする丹生川と紀ノ川の合流点から望む大阪と和歌山県境の山並み。

道なりに進み交番を過ぎた先の橋を渡って道の駅の方に進みます。道の駅を過ぎると体育館(武道館)があるのでその北側の道に入り、道なりに進むと慈尊院の前に出ます。

慈尊院にお参りしたら高野山を目指して町石道を進みます。この先は要所毎に道標があり、町石もあるので道から外れることはないと思います。最初の町石(180 番石)は、丹生官省符神社への石段の途中にあります。

慈尊院の多宝塔と丹生官省符神社への石段。ここから高野山町石道が始まります。

ウグイスの鳴き声を聞きながら道標に従い坂道をどんどん登って行くと橋本市街と紀ノ川を見下ろせる高台に出ます。さらに少し進むと町石道から少し外れた展望台があります。

この展望台はとても見晴らしが良く、紀ノ川の上流側の東吉野の山々まで見えました。その右(南東)を見るとこれから目的地の高野山も見えます。

展望台から望む橋本市街と紀ノ川の上流側。ずっと奥に尖った山が見えましたが、高見山かもしれません。 展望台付近からの遠景。右奥の山が高野山です。

町石道に戻り柿畑の中をさらに登っていきます。雨引山の麓で林の中に入るまでは、見晴らしが良い上に途中にミカンの無人販売があったり梅畑があったりで、ついつい寄り道をしてしまいかなりの時間を食ってしまいがちです。

梅畑。

銭壺石を過ぎると石のごろつく歩きにくい道になり、一度平らな部分を挟んでさらに六本杉峠まで露岩の登りが続きます。この部分は雨が降ると道が川になりそうです。

六本杉峠はちょっとした広場になっているので休憩に向いています。

六本杉峠からは、登ってきた道を U ターンするような方向に進みます。まっすぐ進んでしまうと丹生都比売神社の方に行ってしまいます。

六本杉峠から 30 分ほど進むと鳥居が左右に並んだ二ツ鳥居に着きます。ここには東屋があり、丹生都比売神社の方向がみはらせます。

二ツ鳥居。ここから丹生都比売神社のある里山を見晴らせます。

二ツ鳥居からはゴルフ場まで下りが続き、ゴルフ場から少し進むと地蔵堂があります。ここも芝の広場になっており休憩に向いています。

さらに進むとまたゴルフ場が近くなり、湿地を抜けると上古沢駅から登ってきた道と合流する傘木峠に着きます。この辺りに町石 90 番石があり、半分まで来たことになります。

傘木峠から少しの区間露岩の上り坂になります。

ほほ平らな道を進み左側に車道が見えると矢立はもうすぐです。この辺りからは、これから登る高野山の山が見えます。

高野山は、この山の裏側。ここまで来れば矢立はすぐですが、まだ全体の2/3です。

矢立には 60 番石があります。結構歩いた気がしますが、まだ全体の 2/3 です。この後登りが車道を渡る 40 番石まで続くので、名物の焼き餅を食べながらしっかり休憩します。

車道を渡って展望のある東屋まで登りが続きますが、ここを下ると登ってはいるものの道がぐっと平坦になります。それに合わせて杉の大木が目立つようになり高野山が近いことを感じられます。

杉の大木。矢立を過ぎると杉の大木が目立つようになります。

13 番石から最後の登りが大門まで続きます。それほど急登ではないのですが、だいぶ歩いた後なのでかなりきつく感じました。大門の T 字路に温度が表示されていましたが、この日は 6.4℃ となっていました。

高野山の大門。山歩きはここまでです。後は山内の平らな舗装道を歩くだけです。

大門に着いたらバス停向かいの餅屋さんでおみやげを買って、ゴールの金堂まで車道を進みます。

高野山の金堂。

最後に金剛峯寺にもお参りしておきました。

せっかくなので金剛峰寺もお参りしてから帰ります。

大門側のバス路線は、奥の院側に比べて本数が多くありません。そのためちょうど良いバスがないときには、さらに少し歩いて消防署前にある奥の院側の千手院橋バス停を使ったほうが便利です。

費用

項目 金額 メモ
電車 960 円 JR 大阪駅から新今宮乗り換えで九度山駅
電車 1440 円 高野山駅から新今宮乗り換えで JR 大阪駅ケーブルカーを含む
バス 290 円 千手院橋から高野山駅
ミカン 100 円 無人販売
草大福 1200 円 10 個入り
賽銭
合計 3990 円

高野山までの電車とバス(乗り放題)がセットになった切符があるので、それを使ったほうが安かったかもしれません。

高野山のバスはスルット KANSAI を使用できますが、イコカなどの IC カードは使用できませんでした。

金剛峯寺から帰るときは、少し歩いて奥の院側の千手院橋からバスに乗ったほうが本数がたくさんあります。千手院橋には、大門側と奥の院側の二ヶ所乗り場があることに注意が必要です。

ゴミ採集ゲーム

ゴミ採集ゲームの結果は、12 点採集して「役なし」でした。

ゴミ採集ゲームの結果。12点採集して「役なし」でした。

距離の割にゴミが少なかったのは、高野山への参拝路なのでゴミを落とさないように皆さん気をつけているのでしょうか。

参照と脚注

  1. 高野七口 – 和歌山県街道マップ
  2. おにわはーそと!!ふくわーうち!! – こうやくん日記
  3. 高野山町石道コース – 南海電鉄・ぼちぼち&てくてく MAP 南海そう快ハイキングシリーズ