ルノワール展(京都市立美術館)

目次

京都市立美術館のルノワール展へ行ってきました。正直なところまもなく東京の国立新美術館のルノワール展のほうが見たい作品が多いのですが、それでも「同時代の女性」コーナーはとても面白かったです。モデルのニニ・ロペスさんいいです。

京都市立美術館では 3 月 1 日からモネ展が始まりましたが、19 日からはルノワール展も始まりました。その結果、京都市立美術館の春はモネ展とルノワール展の同時開催という贅沢なことになっています(注 1)。

初日の 19 日がちょうど土曜日ということで、モネ展に続きルノワール展も初日に行ってきました。見たいと思っていた作品を見られただけでなく、自分が思っている(好きな感じの)作品がルノワールの作品全体の中のごく一部だということを認識できたのも良かったです。ルノワールって作品イメージ幅が広いですね。

ルノワール展

ルノワール展は、全体で 5 章の展示にからなっていました。

  • 第 1 章:子どもと少女
  • 第 2 章:身近な女性たち
  • 第 3 章:同時代の女性たち
  • 第 4 章:浴女と裸婦
  • 第 5 章:デッサン・彫刻・版画

この作品群で一番良かったのは「身近な女性たち」と「同時代の女性たち」の部分です。やっぱりルノワールの絵だなと感じ、見ていて優しい気持ちになれます。

身近な女性たち

「身近な女性たち」となっていますが、この章の主人公はなんと言ってもガブリエルさんです。ガブリエルさんは、ルノワール夫人の親戚で 16 歳の時にルノワール家に手伝いのために来て、その後長くモデルも務めたそうです。

面白かったのは、「りんごを持つ子どもまたはガブリエル、ジャン・ルノワールと少女」(No. 9)と「おもちゃで遊ぶ子ども、ガブリエルと画家の息子ジャン」(No. 10)です。どちらも同じ時期(1895−1896 年)に制作された作品で共にガブリエルさんが描かれていて、ガブリエルさんの素朴な感じが伝わってくるようです。

ただその二枚では描かれているガブリエルさんの年齢がだいぶ異なるように思えました。No. 10 では少女らしい感じがあるのに対して No. 9 はもっと大人な感じに思えました。最初子どもの母親なのかと思ったほどです。

この章では、この他にもガブリエルさんがモデルになった作品がたくさんありました。

同時代の女性たち

この章が一番私の思うルノワール的作品が多かったです。

「うちわを持つ女」(No. 23)も良かったのですが、「猫を抱く女」(No. 19)が良かったです。キジトラの猫もかわいいのですが、モデルのニニ・ロペスさんがいい感じです。このモデルさんは、時間に正確で控えめな性格でルノワールお気に入りのモデルさんだったそうです。

面白かったのは、多くの作品で誰がモデルを務めたか同定されていることでした。肖像画や家族がモデルを務めるならば同定されていても不思議はありませんが、その他でもモデルさんの名前がわかっているのは驚きでした。

「昼食後」(No. 21)に解説があったのですが、この絵で食後酒を楽しんでいる女性はエレン・アンドレさんという女優だそうです。この方は他にもルノワールの「舟遊びをする人々の昼食」やドガの「アプサントを飲む人(カフェにて)」にも登場しているのだそうです。

ドガの「アプサントを飲む人(カフェにて)」は、有名なので絵を知っていましたが、てっきり実際のカフェで写生をして作品にした絵だと思っていたので、モデルを使って演出していたとは驚きでした。

あと「桟敷席」(No. 22)は、ボール紙にパステルで描いた作品でデッサンのような未完成な感じはありますが、うっとりと舞台を眺める女性の感じが伝わってくるようでした。

子どもと少女

ここで一番有名な作品は「草原で花を摘む少女たち」(No. 4)でしょうか。いかにもルノワールの絵だという感じです。それと「白いエプロンのリュシー・ベラールの肖像」(No. 2)も見たことがある気がします。

この中で私が気に入ったのは、「かぎ針編みをする少女」(No. 1)です。肌の色や線の感じが硬いというかルノワール的ではありませんが、光が当たる感じの表現が気に入りました。この絵のモデルさんは、前出のニニ・ロペスさんだそうです。髪型が違うからなのか、No. 19 の感じとだいぶ違うように思えました。

浴女と裸婦

ルノワールは印象派に分類されていますが、作風は時代と主にだいぶ変化していきます。私が思い描くルノワールの作品というと、子供や女性の肖像画、その時代を写した風俗画的な絵をイメージします。しかしすっかり忘れていましたが、最初にルノワールの名前を聞いた(美術の教科書に載っていた?)のは入浴するふくよかな女性の作品だったような気がします。

デッサン・彫刻・版画

デッサン・彫刻・版画となっていますが、ほとんどはデッサンでした。

デッサンに用いる筆記具は黒いものばかりだと思っていましたが、赤茶色のチョークで描かれたものは黒より柔らかい感じがしますね。色の選択は単にその時の気分なのか、一般的に使い分ける基準があるのでしょうか?

たぶん美術に詳しい人に解説してもらいながら鑑賞したらもっと興味が湧くのだと思いますが、デッサンの見どころを分かっていないのでこの作品群は今ひとつ興味がなかったかな。

混雑状況

ルノワール展

19 日(土曜日)午前の混雑状況は、初日だからか土曜日にもかかわらず、チケットの購入と入場共に全く待ち時間無しでした。

モネ展

同時開催のモネ展の方は、チケットの購入に 20 分ほどかかると案内していましたが、入場待ちはありませんでした。前売りチケットを買っておくのが割引もあるのでお得ですね。

京都染色美術協会展

美術館の二階では、京都染色美術協会による展覧会が行われていました。

染色協会が何か全く知りませんでしたが、テーマが「振り袖」ということで「入場無料」ということもあり綺麗な着物を見られるかと期待して見学させてもらいました。

私が思い描く着物よりも斬新なデザインや織り方(?)をしたものもありましたが、全体的には淡い色合いの春らしいものが多かった気がします。普段成人式や卒業式で着られているような彩度の高い柄よりも、私はこおいう淡い色合いの着物の方が好きかな。

しかし綺麗な着物と思いながらも、いったいいくら位するのかという疑問も浮かんでしまいました。手織りという札が付いていて、染も手作業でしょうから三桁万円とかするのでしょうか?

参照と脚注

  1. 東京の国立新美術館でも 2016 年 4 月からルノワール展が開催されます。京都市立美術館のルノワール展よりもずっと見たい作品が多い展覧会で、正直なところ東京都と近県の方が羨ましいです。