金環日食の連続写真を撮影
来週 5 月 21 日は、海外に行かなくとも金環日食を見られるとても稀な機会です。こんな機会はめったいに無いので、後でアルバムを見て金環日食があったことを思い出せるように写真に撮っておきたいですよね。
ただ金環日食の撮影はやり直しができないので、前もってリハーサルをした結果を元に当日はこうやって写真を撮ろう、金環日食の写真と風景はこうやって合成しようという方法を記録しておきます。
注意:絶対に太陽を直接見ないこと。日食観察プレートなどで光を弱めないで直接太陽を見ると、ちょっと見ただけでもしばらくは目を閉じても太陽が見えるようになってしまいます。ましてカメラなどのレンズを通すと光がさらに強くなるので、一瞬で目がゆで卵になってしまいます。
必要な準備・道具
- 金環日食となる最大食の時刻
- 金環日食の写真を合成して連続写真にした時に、太陽が等間隔でないとかっこ良くありません。そこで金環日食の中心に 1 枚撮影できるように、最大食となる時刻を調べておきます。一定間隔で撮影するとして、そこから逆算して最初の一枚を撮影する時刻を決めておきます。
- デジタルカメラ
- 普通のコンパクトデジカメでも撮影できます。しかし日食の撮影には露出やピントをマニュアルで設定できるミラーレス一眼や一眼レフタイプのデジカメの方が便利です。
ただし私のコンデジを基準にしているので、もしかしたら最新のコンデジならばタッチしたところにピントや露出を合わせられ、ミラーレス一眼や一眼レフタイプのデジカメと遜色ないかもしれません。
三脚に固定して太陽を撮影する他に、もう一台カメラを用意して周りの様子や木漏れ日を撮影しておきたい。これはデジカメで無くとも、ケータイやスマートフォンのカメラ機能で十分です。
- 減光(ND)フィルターまたは日食観察プレート
- 金環日食を撮影するためには減光(ND)フィルターを準備するのがベストです。日食観察メガネでは、太陽に色が付いたり縁がぼやけてしまいます。ただし ND フィルターは値段が非常に高いので、今回のためだけに ND フィルターを買うのはちょっともったいないです。
私は、太陽に色が付いたり縁がボケてしまいますが、安い日食観察プレートを使うことにしました。値段が安くて下敷きのような大きなプレートが付いていたので「月刊 星ナビ増刊 金環日食を見る
」を買いました。
- フィルターフォルダー
- 強い光が悪い影響を与えるのは目だけでない気がします。太陽の光を直接レンズに長時間入れると、レンズで集められた強い光が奥まで届いてデジカメが壊れそうな気がします。そこで常に太陽観察プレートをセットしておけるようにフィルターフォルダーを購入しました。1500 円くらいだったと思います。
- 三脚
- 太陽が欠けていく連続写真を撮影するためには、常に同じ範囲を撮影する必要があります。そのため三脚を使ってカメラを固定します。また太陽観察プレートを通すと光が弱くなるのでシャッタースピードが遅くなります。そのため手ブレを防止するためにも三脚が必要です。
- 水準器
- カメラを三脚にセットする時に水準器を使って水平を出します。
- カメラの時刻合わせ
- デジカメで撮影した画像ファイルには、撮影時刻が記録されています。そこで正確な時刻が記録されるように、デジカメに内蔵されている時計を合わせておきます。
レンズ(焦点距離)の選択
焦点距離の長い望遠(倍率が大きい)レンズは太陽を大きく写すことができます。しかし、大きく写るということは、狭い範囲しか写せないということです。そのため太陽の欠け始めから金環日食を経て元に戻るまでを収めようとすると、むしろ焦点距離の短い広角(倍率が低い)レンズが適しています。
コンパクトデジカメには、自動的に電源を切る機能があります。この機能が働いてしまうと、電源が切れるだけでなくレンズも閉じてしまいます。そこでコンデジで日食の連続写真を撮影する場合は、電源を入れた後の標準の焦点距離を使うようにします。中途半端にズームしていると、毎回微妙に太陽の大きさや撮影する範囲が違ってきてしまいます。
私はズームレンズの一番広角側(17mm)で撮影する予定です。私のカメラは、24mm より少し広角側で撮影するとちょうど欠け始めから最後までが画面の一杯に入りそうです。
太陽が移動する範囲がどのくらいかは、次の写真を参考にしてください。17mm のレンズで太陽を 10 分間隔で 13 枚(2 時間分)撮影して一枚に合成しています。一杯に伸ばした自分の手を同じ焦点距離で撮影して合成しています。
手の大きさはだいたい誰でも同じなので、この写真から太陽の動く範囲を大まかに推定できます。
広角で撮影すると確かに太陽は小さく写ります。しかし最近のデジカメは画素数が多いので、ピントさえ合っていれば太陽の部分を切りだしてピクセル等倍で見るとかなり大きな太陽になります。
次の写真は、上の 17mm のレンズで撮影した写真から太陽の部分を切りだしたものです。
ピントを合わせる
デジカメで一番便利な機能はライブビューです。この機能のおかげで、花のマクロ撮影のようにピント合わせが非常にシビアな撮影も簡単になりました。太陽を撮影する時にも、このライブビューを使ってピントを合わせます。
まず三脚にカメラセットして、日食観察プレートなどの減光フィルターを通した太陽をライブビューで液晶モニターに表示させます。そしてもっとも太陽が小さくなるようにピントをマニュアルで合わせます。広角で撮影すると表示される太陽が小さいので、ライブビューの拡大機能を使って太陽の部分を拡大してより正確にピントを合わせます。
ライブビューを使えば目で直接ファインダーを覗く必要が無くなり、安全にピントを合わせることができます。
ピントが合ったら、不用意にレンズに触ってピントがずれてしまわないようにテープで固定しておくのも良いアイデアです。
露出を決定する
露出はスポット測光を使って合わせます。プログラムオート(絞り優先またはシャッター優先でも可)にセットして、太陽の中心をスポット測光します。この時のシャッタースピードと絞りの値を記録します。
設定をマニュアルに変えて、上で記録したシャッター速度と絞りに合わせます。これを基準にして設定を変えながら試し撮りをして、最終的なシャッター速度と絞りの値を決定します。私のカメラは、ISO200 の F4.5, 1/15 で撮影するのが良いみたいです。
露出がプログラムオートだと、露出を決めるセンサーの位置から太陽が外れるとシャッター速度が非常に遅くなり、太陽の部分が露出オーバーになってしまいます。そこで常に同じ露出になるようにシャッター速度と絞りをマニュアルで設定します。
日食を撮影する
ピントと撮影条件が決まったら太陽が移動することを考慮して構図を決め、カメラが動かないように三脚にしっかりと固定します。金環日食の連続写真と風景を合成する時には、水平が取れていないと収まりが悪いので、カメラを三脚にセットする時に水準器を使って水平を出しておきます。
後はあらかじめ決めておいた時刻から一定時間でシャッターを切るだけです。
風景を撮影する
金環日食が終わったら、カメラが動いてしまわないように注意して太陽が撮影範囲から完全に外れるのを待ちます。
太陽が撮影範囲から外れたら、プログラムオートの評価測光で金環日食の背景となる風景を撮影します。この時適正露出よりも少し暗めに撮影しておくと、金環日食との合成が楽です。
連続写真を合成する
金環日食の写真を合成して連続写真にするには、「金環日食の連続写真と風景の合成写真」を参照して下さい。