四葉のクローバーの科学的な探し方
四つ葉のクローバーが見つかる確率はだいたい 1/10000 です。これを科学的に効率よく探すには、ぐるっと見回して「あれ?」と違和感を感じる所を探します。 四つ葉のクローバーは突然変異で、普通は葉の数が 4 枚以上にならないように抑えている遺伝子が壊れた結果です。
春になると公園や河川敷にでかけてのんびりする機会が増えます。そんな場所には大抵クローバーが生えていて、つい四つ葉のクローバーがないかと探してしまいます。四つ葉のクローバーを見つけると幸運が訪れるという話を信じているわけではありませんが、やっぱり珍しい物を見つけると嬉しくなりますよね。
先日 YouTube で「科学的に」四つ葉のクローバーの見つける話(注 1)をオススメされたので、どんな内容だったか紹介します。
四つ葉のクローバー
幸運を呼ぶ四つ葉のクローバーは、シロツメクサという種類です。この学名は Trifolium repens で、無理やり日本語で解釈すると「3 つ葉の repens」という意味です。三つ葉がトレードマークなので四つ葉が珍しいのです。
しかしクローバーには色々な種類があり、中には四つ葉が普通のクローバーもあるそうです。もし四つ葉のクローバーを埋め込んだアクセサリーを買うならば、これらの偽物四つ葉のクローバーを買ってしまわないように注意する必要して下さい。(注 2)。
四つ葉のクローバが見つかる割合
四つ葉のクローバーが見つかる確率は約 1/10000 だそうです。面積にすると大体 1.1m 四方(1.2m^2)に一つ四つ葉のクローバーが見つかる確率です。でも平均なので、1.1m 四方をシラミ潰しに探しても見つからないことも良くありそうです。ほぼ確実に見つけるには、一畳分くらいの範囲を探す覚悟が必要です。
しかしせっかくの休日に、そこまで真剣になって探したくないですね。もっと効率的に探す方法はないのでしょうか?
科学的に四つ葉のクローバーを探す
四つ葉のクローバーを見つけるエキスパート(そんな人がいるんだ)はどうやって探しているかというと、ぐるっと周りを見渡して「あれ?」となった場所を探すのだそうです。こんな方法は、ぜんぜん科学的ではないように思えますね。でも、実はこの方法が科学的で効率的な方法なのです。
レントゲン科の医師がガンなどの異常を見つけるときには、一枚の X 線画像を端から端まで細かく検討しているのではなく、何枚もの画像を次々に見ていき気になる画像をまずピックアップしていきます。一枚の画像を見る時間はたったの 0.2 秒ほどだそうです。
こんな短時間見るだけでは見落としが結構ありそうに思えます。確かに新人の医師なら見落としもありそうですが、人の認識力とはすごいもので慣れればチラッと見るだけでなにかおかしいと異常に気づけることが心理学の研究で証明されています。
X 線画像ではなくても、花や木の名前を覚えると、それまで気にも止めなかったその花や木が注意していなくとも目に付くようになったという経験がありませんか? これも同じことです。
X 線画像ではありませんが、私の経験でも同じようなことがありました。毎日多数のサンプルを調べていても最初は全く異常を見つけられませんでした。しかし最初の一つ探している異常を見つけると、同じものを簡単に次々と見つけられるようになりました。
そこで四つ葉のクローバーを探す時も、最初はそんなのは無理と思えるかもしれませんが、ダメ元な気持ちでクローバーが生えている所を見回して見て下さい。そしてまず一つ四つ葉のクローバーを見つけます。すると次からは四つ葉のクローバーをもっとずっと簡単に見つけられるようになります。
科学的に四つ葉のクローバーを作る
「鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス」ではありませんが、四つ葉のクローバーが見つからなければ作ってしまうことができます。
四つ葉のクローバーができるのは、突然変異によるものだそうです。2010 年にジュージア大学の Tashiro らが四つ葉のクローバーに関連する遺伝子座を決定しました(注 3)。具体的にどのような分子なのかは分かっていませんが、正常な状態では葉の数が三枚より増えないようにしています。そのためこの遺伝子に突然変異が起こると葉の数が増えて四つ葉(またはそれ以上)になるのだそうです。
遺伝子の異常なので次の世代に受け継がせることができ、上手いこと受粉させると四つ葉がたくさん見つかる株を作り出すことも可能です。四つ葉のクローバーを一つ見つけると、その近くを探すと他にも四つ葉のクローバーを見つけられるという話を聞いたことがあります。これは、このような四つ葉がたんく見つかる株が自然にできた結果なのかもしれません。
ちなみに葉の数が最も多いクローバーのギネス世界記録は 56 葉のクローバーで、Shigeo Obara さんという日本の研究者が見つけたものです(注 4)。ただ写真を見ると、四つ葉の上位版というより何本もの茎がくっついたような感じで、より幸運に巡り会えそうという感じではありません。
シロツメグサの変異
シロツメグサには色々な変異が見つかっています(注 5)。四つ葉のクローバーになる変異の他には、花の色が赤いもの、葉に白く V の字が入っているもの、葉に赤い模様が入っているものなどがあります。それらの変異体の写真は、White Clover Geneticsで見ることができます。
しかしシロツメグサは、小さくて雄しべと雌しべが花弁で隠されているので掛けあわせて遺伝子座を決めるのはかなりの根気が必要そうです。