モネ展(京都市立美術館)
モネ展(京都市立博物館)は、久しぶりに手放しにオススメできる展覧会でした。「睡蓮」の池に関する新しい発見があり、「印象、日の出」の色が印刷物と全く違うことに驚きました。同時開催だた山岳写真展もかっこいい写真ばかりで、山旅に行きたくなりました。
3 月 1 日に京都市立美術館で始まったモネ展を見に行ってきました。この日の京都はとても寒くて、朝は日陰や屋根に雪が残っていました。
印象派の巨匠モネの展覧会ということで長蛇の列を覚悟しました。しかし平日で初日だったからか全く並ぶこと無く入館でき、館内も特に混雑なくゆったりと見て回ることができました。
モネ展
絵画の展覧会は、目玉となる作品が広告ポスターに使われるので、大抵その絵以上の作品に出会えることはありません。しかし今回のモネ展はポスターに使われた「睡蓮」(No. 63)や展示替えとなる「印象、日の出」(No. 1)(注 1)の他にも「おおっ!」となる作品がたくさんありました。
以下作品の感想メモ。
家族の肖像
モネは風景がが有名ですが、肖像画も結構描いています。家族の肖像画として息子たちの肖像画がありましたが、「ジャン・モネの肖像」(No. 9)が一番好きです。
若き日のモネ
このコーナは、全く知らなかったモネの世界でした。少年時代には風刺画を書いて既に地元で有名になっていたこと、その絵を売ったお金で油絵を始めたことは全く知りませんでした。
地元では有名だったと言っても、ほとんど無名の少年の作品が残っているのには驚きます。
モティーフの狩人
日本の浮世絵の影響を受けているということですが、黒い背景の「海辺のカミーユ」(No. 7)が浮世絵みたいだと思うのは意識しすぎでしょうか?
カミーユといえば、「トゥルーヴィルの海辺にて」(No. 6)ががモネの絵とは知りませんでした。それに縞のドレスを着た女性は双子なんだと思っていましたが、二人共カミーユなんですね。
ここでの一番のお気に入りは「ポリーの肖像」(No. 56)です。田舎の気の良いおじさんという感じがとても伝わってきます。
「クルーズ川の渓谷、夕暮れの効果」(No. 60)は、どう見ても保津峡の夕暮れですね。影になった山肌と、まだ日がさして照らされる尾根の木の対比が良かったです。
印象、日の出
「印象、日の出」(No. 1)は、こんな感じの絵だったかな? 照明のせいなのか反射した光ではなく、透過光を見ているようでした。印刷された絵と実物では色の感じ・輝きが異なり、実物のほうがずっときれいなことは良くあります。しかしこの作品はそれ以上に違っていました。まるで壁に最新の高細密ディスプレイが埋め込まれているのではないかと疑ってしまうほどです。
睡蓮と花
最初にポスターに使われた「睡蓮」(No. 63)を見た時にはそれほどとは思わなかったのですが、次の部屋の睡蓮などを見た後に戻ってきて再度見ると透明感が感じられてとても良かったです。
モネの睡蓮の池は、写真で見たイメージで緑色に濁った水だと思っていました。しかし「睡蓮」(No. 63)を見ると、池の水は透明なんですね。柳が写っているところは空の反射が抑えられ、睡蓮の葉の影が底に写っているのがわかりました。池のイメージがこの絵で全く変わりました。
「睡蓮」(No. 70)の睡蓮の花にスポットライトがあたっている感じと、「睡蓮とアガパンサス」(No. 65)、荒いけど「アイリス」(No. 67)も気に入りました。
最晩年の作品
モネが白内障になってからの作品は、それまではあまり使われていない赤がこれでもかという感じに使われています。そのため、それまでの光を感じられるような清々しい感じが無くなってしまいあまり好きではありません。
最晩年の作品の部屋には、モネが使っていたパレット(No. 90)に並んでメガネ(No. 89)が展示されていました。モネは白内障の手術を受けた後見え方が変わって青い光が以前より強く感じられるようになったということです。そのためモネのメガネは、ディスプレイのブルーライトを防ぐメガネのように少し黄色がかったレンズが使われていました。
それで思ったのですが、もしかすると青が強く見えるというよりも赤に対するモネの感覚が弱くなって、結果として青が強く感じられると思っていたのではないでしょうか。そのため最晩年の作品は、今までと同じ色調のつもりでも赤が強くなっているのではないでしょうか。
ミュージアムショップ、おみやげ
モネ展とは関係ありませんが、ミュージアムショップでとても愉快な絵葉書を見つけました。角度によって見える絵が変わる絵葉書で、モナリザがウィンクするのがとても気に入りました。他には奥行きが付いて 3D に見えるのも面白かったです。
マルモッタン・モネ美術館
今回のモネ展は、パリのマルモッタン・モネ美術館(注 2)に収蔵されている作品群です。
このマルモッタン・モネ美術館は、ブローニュの森に近いパリの中心からほんの少し西の閑静な住宅街にある美術館です。ベルト・モリゾの作品も多く収蔵していて、それらも見どころの美術館です。
ルノワール展
この後 3 月 19 日からはルノワール展が京都市立美術館で始まります。モネ展とルノワール展の同時開催とはなんとも贅沢です。既にルノワール展の前売り券を買っているので、初日に行こうととても楽しみにしています。
偶然にも東京の国立新美術館でも 4 月からルノワール展が予定されています(注 3)。正直なところ、こちらの方が行ってみたいルノワール展です。関西にも巡回してこないかな。
山岳写真展
京都市立美術館の二階では、山岳写真展が開催されていました。さすがにどの写真も山の良さを引き出していて、見ていると山に行きたくなってしまいました。昨年は夏山にいけなかったので、余計に夏が楽しみになります。
山岳写真は、山の厳しさや雄大さをテーマにするジャンルだと思っていました。しかし展示を見ると、山を中心にしながらも花が添えられていたり、星空写真があったりもう少し対象が広いのだということを知りました。自分が普段ハイキングで撮っている写真も山岳写真と言えないこともないかなと思いました。
それと気がついたのは、山をドーンと中心にした山岳写真は雪山写真だということです。夏山の写真はだとしても、ほぼ必ず雪渓が写っていました。確かに雪がある方が山はかっこよく見えるということもありますが、コントラストができて写真になりやすいのでしょうか。
こんな写真を撮れたら良いなとは思いますが、そのために何時間も粘ったり同じ所に何度も通ってチャンスを狙うというのは私の性には合わないな。それなら行ったことのない場所を歩いてみたいと思ってしまいます。
白川沿いに
京都市立美術館へは、最寄り駅の地下鉄東山駅を出て東に進んで平安神宮からまっすぐ南に伸びる大きな道を行くのが一番わかりやすい道です。
でも、オススメは駅を出て最初の路地を入って白川沿いに行く道です。路地を入るとすぐに京都らしい昔ながらのという感じの餅屋さんがあたり、短い距離ですが川底が白砂の白川沿いを歩くのは、それだけでとてもワクワクさせられます。特に夏は川の流れを見るだけで涼しい気分になれます。
今回白川沿いを歩いていたら、椿が川沿いに植えられているのを見つけました。その椿から落ちた花が川に落ちた姿がなんとも風流でした。なんと言うことのない風景も風流にしてしまう「京都マジック」ですね。
参照と脚注
- 「印象、日の出」(No. 1)は、3 月 21 日までの展示です。3 月 22 日からは、「テュイルリー公園」(No. 2)に掛け替えられます。
- Marmottan Monet museum
- ルノワール展 – 国立新美術館