地獄谷の沢登りと蛇谷北山経由で六甲山最高峰へ
気温がだいぶ高くなってきたので、沢登の芦屋地獄谷から東お多福山と蛇谷北山を経由して六甲山最高峰へ登ってきました。地獄谷は、沢登りだけでなく上部の岩場も楽しかったです。またスミレやツツジなど花もたくさんで楽しいハイキングでした。
最近気温がだいぶたくなり初夏と言っても良いような日が多くなってきました。つい一月前のストーブをしまうのをためらっていた頃が嘘のようです。
そこで今回はちょっと涼しげな芦屋の地獄谷を遡上することにしました。このコースは、滝を乗り越える時のスリルや、上流部は岩の間を縫って進んだり、岩に登って眺めを楽しんだりという面白さが楽しいコースです。ただしこのコースは滑落や道迷いの危険がある経験者向けのコースです。
その後は東お多福山の草原を進み、新緑や春の花を楽しみながら芦屋市最高峰の蛇谷北山経由で六甲山最高峰、西お多福山と縦走してきました。こちらは誰でも楽しめる気持ちの良いコースです。
しかし気がついたら 9 時間近くも歩いていました。花が咲いていると写真を撮ってつい歩くのが遅くなってしまい、写真を取るぞ!という時はコースを短くしないといけないなと反省しました。確かに「カメラをつれて山歩へ行こう!」(注1)にはコースタイムの 1.5 から 2 倍の時間を見る事と書いてあったことを思い出しました。
景色と発見
地獄谷
地獄谷は、「山と高原地図」には経験者向けコースを示す破線の難路となっています。滝を乗り越えるための人工的な手がかりはありません。またその上流の B 懸尾根は岩の間を縫って進む見通しが悪く、道標も全く設置されていません。
行けるかな?と判断を迷うコースは、まだ行けないコースです。
でも行ければ「やった!」という気分を味わえて、おもしろい景色でもあり楽しいコースなのは間違いありません。経験者であれば、これからの季節にオススメできるコースです。
この構図って六甲山のガイドブックの表紙になっていたような気がします。住宅街のすぐ裏山にこんな岩場がある六甲山の魅力を示す景色です。
この尾根を登っていくのですが、尾根伝いではなく岩の間を「こっちかな?」「これを登るの?」と思いながら進んでいきます。
中には非常に狭い岩の間を抜けて、ザックをゴリゴリ擦りながら進む必要があるところもあります。擦るのがザックならまだ良いのですが、腕などを擦りむいてしまうこともあります。
また途中には、ちょっと変わった形の岩があったりもします。
こおいうふざけた岩でなく、ちゃんと地図に名前が載っている岩もあります。
この辺りのことを「万物相」と呼ぶのだと思いますが、ピラーロックと呼んでいる人もいます。ピラーロックと万物相は同じことなのでしょうか?”pillar rock”なら「柱状の岩」で、確かに柱のように突き立っていますね。
新緑の季節
この季節は、山肌の黄緑色が柔らかそうな感じがとっても好きです。黄緑色と一口に言ってもそれぞれが異なった色をしているのがおもしろく、つい見とれてしまいます。
もう少し露出を抑えたほうが、黄緑色がきれいに出たかな。
山肌を覆う一面の新緑もきれいですが、日に透かされた若葉もフレッシュな感じがして好きです。
手の届く所に若葉があると、つい手で触ってその柔らかさを確かめてしまいます。
新緑の緑に赤茶色のコントラストを見て思い浮かんだのが、アニメ「ちはやふる」(注2)です。
普通若葉といえば緑ですが、中には紅葉しているような赤茶色の若葉もあります。普通若葉は黄緑色の若葉から濃い緑へと変化しますが、このモミジは赤茶色から緑へと変化します。
この木は西お多福山に生えていたので植樹された園芸種(春もみじ)の可能性を否定できませんが、自然に生えているモミジにも同じような変化をする種があるのでしょうか?
スミレを同定
春まだ寒い頃から日当たりが良い所ではスミレが咲き始めます。そのためこれまでもスミレが咲いているのを見かけましたが、今回は日陰を含めて至るところと言ってもいいくらいたくさん咲いていました。
タチツボスミレは、山で一番良く見かけるスミレだと思います。ハート型の葉に薄めの青紫の花、花の内側には毛が生えていないことが特徴です。
このスミレは最初タチツボスミレかなと思ったのですが、葉の形が少し尖っているのと花の色が濃いのが気になり写真を撮っておきました。そしてよくみると花の付いている茎に毛があります(花の内側には毛がない)。タチツボスミレはその部分に毛が生えていないので、タチツボスミレとは別の種のようです。
そこでスミレハンドブック(注3)で調べたところ、どうやらニオイタチツボスミレのようです。。
今回よく見かけたすみれがツボスミレ(多分)です。
白い小さな花のスミレで、とても可愛らしかったです。スミレは花の後ろに出っ張りがあるのですが、この花はその出っ張りも短かったです。
もう一つ分からないのが、このスミレです。
葉の形などは普通のスミレ(スミレという種)なのですが、花の色が薄い青紫なのと、日陰に咲いていることが気になりました。また葉の生え方も違います。スミレは、普通濃い紫色の花でよく日の当たるところに生えています。これだけで別の種とは決められませんが、気になったスミレです。
スミレは種類が多く、種を同定するのが私には難しいものの一つです。図鑑に見分け方が書いてあっても、後から見分けポイント知っても山で観察していないので同定できない事が良くあります。またこれか!と思っても、別の図鑑には似た種が並んでいてさらに別のポイントを見ておく必要があったりもします。
そのため私の同定は間違っている可能性があり、植物学博士と一緒にハイキングに行きたいものです。
ツツジの共演
もう 5 月となり街のツツジは既に見頃を過ぎています。そのためいくら標高が違うとはいってもミツバツツジは終わっているかと思っていましたが、意外と綺麗な花が残っていました。
その変わりに、そろそろ見頃かと思っていたヤマツツジのほうがまだ蕾の株がほとんどでした。咲いている株もありましたが、見頃までにはもう一週間位かかりそうです。連休明けの週末頃が見頃でしょうか。
ツツジといえば、モチツツジがもっと多く生えていると思ったのですが、このコースにはあまり生えていませんでした。もっと標高の低い所に生えるのでしょうか?
モチツツジは花の色で見分けられますが、花が咲いていなくとも蕾の頃から額のところがネバネバするのですぐ分かります。ネバネバするツツジなので、モチツツジです。
六甲山最高峰や西お多福山に生えていたドウダンツツジは植えられたものかな?
ドウダンツツジはツツジ科ドウダンツツジ属なので、ミツバツツジなど同じツツジ科ではありますが属が違うので花の形がだいぶ異なります。
花の季節
その他にも色々な花が咲いていました。
別の写真から付け根近くの葉が小さくて、葉の縁にギザギザが目立たないのでマルバアオダモだと同定しました。このマルバアオダモの枝を折って水につけて置き、その水を日に当てると青白く光るそうです(注4)。
手元の図鑑ではニシキゴロモかツクバキンモンソウか区別がつかなかったのですが、「六甲山の草花ハンドブック」(注5)に見分け方が書いてありました。それによるとニシキゴロモかツクバキンモンソウかは、花の形が違うということでした。
ツクバキンモンソウは、キランソウのように花が腕を広げた宇宙人のように見えます。それに対してニシキゴロモは宇宙人の頭に当たるところから花びらが伸びているので、普通の花びらになっています。
もう一つ似た花でジュウニヒトエがありますが、こちらは葉が白い毛で覆われています。
ムラサキケマンの花を真上から見ると、それぞれの花はクリンソウのように全部の方向を向いているんですね。
葉が 5 枚なので、普通のアケビです(注6)。アケビの花には大きな花と小さな花があり、枝に近い方の大きな花に実がなります。ちなみに花びらみたいなのは、花びらではなく額です。
秋にアケビの実を食べてみたいと思うのですが、野生動物または先行者が取ってしまい、手が届くところには残っていません。
高感度って便利
打越峠の杉林の中を歩いていたら谷の方にイノシシのぬた場があり、そこに溜まった水で鳥が水浴びをしているような音が聞こえてきました。しかし暗い上に距離もあり目では鳥の姿を全く確認できませんでした。
そこでカメラの感度を ISO1600 にセットしてズームを最大の 70mm で撮影してみました。もちろんこんな焦点距離で鳥を大きく写せるわけではありませんが、写真を拡大してみるとちゃんと鳥が写っていました。それもほとんどブレずに。
ISO1600 は普段使うことはありませんが、こんな暗い所で三脚を使わなくてもブレさせずに撮影できるとは驚きました。ノイズもあまり無いし、もっと積極的に使っても良いかも知れないなと思いました。
それと、等倍で確認してちょっとブレた程度なら、縮小すると気にならなくなります。
ルートと注意点
- 2016-5-1
- 阪急芦屋川駅(8:06)→ 高座ノ滝(8:38-8:49)→ 風吹岩(10:24)→ 雨ケ峠(11:12)→ 東お多福山(11:34)→ 蛇谷北山(12:25)→ 石の宝殿(12:43)→ 一軒茶屋(13:01)→ 六甲山最高峰(13:10)→ 西お多福山分岐(13:47)→ 西お多福山(13:58)→ 打越峠(16:00)→ 八幡谷登山口(16:43)→ 阪急岡本駅(17:00)
- 距離と時間
- 15.7km 約 9 時間(休憩を含む)
- トイレ
- 芦屋川駅、高座ノ滝、六甲山最高峰への登り口、岡本駅。
注意点
- 芦屋の地獄谷は「山と高原地図」では破線の難路となっています。途中には案内の道標は一切ありません。また滝の水で濡れた岩を登ったり、ザレて滑りやすい登り降りがあります。
- 蛇谷北山のコースは、木があるとは言え急な崖の脇を通るコースです。
- 西お多福山から下ってきたところには、住吉川を渡る橋はありません。そのため西お多福山から下山するときには、川の増水に注意が必要です。
- 危険ということもありませんが、八幡谷は片側が急な谷になっているので通行に注意が必要です。
ルート案内
芦屋駅をスタートしたら、高座ノ滝の手前まで車道を進みます。途中に高級そうな住宅地があり、つい覗きたくなってしまいます。
高座ノ滝脇を登って、尾根を超えた反対側の砂防ダムに降ります。地獄谷は、この谷を遡上します。以後風吹岩の手前に出るまで道標は一切ありません。
滝には人工的な手がかりはないので、岩の手がかりを探して慎重に滝を越えていきます。先行者がいるときは、その人の登り方が参考になります。遡って行くと砂防ダムの下に出るので、その手前から右の支流に入ります。
しばらく遡ると岩壁の所に出るので、後は踏み跡を吟味しながらピラーロック・万物相を目指して先に進みます。この辺りは風化した花崗岩なためザレた部分が多く、足元に注意が必要です。ピラーロック・万物相からは、踏み跡を辿ってハイキングコースに出ます。
風吹岩からは、歩きやすい道がゴルフ場まで続きます。ゴルフ場の辺りから登りがきつくなり、植林帯を過ぎればあとひと登りで雨ヶ峠です。
雨ヶ峠からは、五助堰堤への道と別れて東お多福山を目指します。歩き出すとすぐに気持ちの良い草原になるので、休憩は雨ヶ峠ではなく少し頑張ってこちらで取ることをオススメします。道なりに進むと東側が開けた東お多福山の広い山頂に出ます。
東お多福山からは土樋峠に下り、林道に出たら正面の山道に入り蛇谷北山を目指します。しばらくは森の中の道ですが、しばらくすると急な登りとなります。その後両側に木があるので高度感はありませんが細い尾根を通過して、もうひと登りで蛇谷北山に着きます。山頂は、南側が少し開けています。
蛇谷北山から一旦下った後に登り返すと、石の宝殿の駐車場に出ます。車道に下った後は、六甲全山縦走路を西に進んで六甲山最高峰に向かいます。途中トンネルの上を越えるルートは、ルートの神戸側に崩落箇所があります。通れないことはないのですが、トンネルを抜けてショートカットしたほうが良さそうです。
六甲山最高峰に登ったら六甲全山縦走路をさらに西に進み、西お多福山に向かいます。全山縦走路から分岐して西お多福山に向かう舗装路からは最高峰や大阪平野がよく見晴らせます。
西お多福山の電波塔を過ぎてしばらく進んだら左の山道に入り、住吉川を目指してどんどん下っていきます。鞍状の所に出たら、中間地点でしょうか。さらに下り杉林に入ると沢音が聞こえるようになり住吉川も直ぐです。
飛び石で住吉川を渡ったら、高巻きはありますが川沿いに下っていきます。そして石畳のところで打越峠を目指して分岐します。打越峠を超えたらしばらくゆるく下り、水平道の先からジグザグと急激に高度を下げます。後は川沿いに八幡谷登山口まで下ります。
八幡谷登山口からは車道を神社まで下ります。神社の前で橋を渡り、道なりに下ると岡本駅の東に出ます。この辺りも周りは高級そうな立派な家が並んでいます。
費用
項目 | 金額 | メモ |
---|---|---|
阪急 | 220円 | 神戸三宮から芦屋川 |
阪急 | 190円 | 岡本から神戸三宮 |
合計 | 410円 |
岡本駅は特急が止まるので、岡本に下山すると三宮まであっという間に帰れます。
ゴミ採集ゲーム
ゴミ採集ゲームの結果は、31 点採集して「役なし」でした。
春になり人が多く歩くようになり久しぶりの大漁だったのですが、「役なし」とはちょっと残念でした。
参照と脚注
- カメラをつれて山歩へ行こう!(ISBN: 978-4774151007) 私のブログ記事「カメラをつれて山歩へ行こう!」
- ちはやふる:「競技かるた」を題材にした高校生の恋愛ドラマ。このアニメのイメージ画像では、新緑の緑の中に主人公の女性が赤地に紅葉の着物を着ていました。ちはやふる – 日テレ・オンデマンド
- スミレハンドブック(ISBN: 978-4829910771) スミレだけで薄いながらも一冊の本になるほどの種類が生えていることに驚きました。黄色い花のスミレも見てみたいな。
- マルバアオダモの枝をおって水につけておくと、その水が蛍光を発すると「葉で見分ける樹木」(ISBN: 978-4092080232)に書いてありました。ただこれはマルバアオダモに限ったことではなく、モクセイ科ネトリコ属の他の種でも同様に蛍光を発するようです。アオダモの枝で本当に水が青くなるのか
- 神戸・六甲山の草花ハンドブック 春~初夏編―京阪神で見られる草花331種(ISBN: 978-4434218675) 普通の図鑑であれば見たことのない花でも、自分の行ったことのない所に生えているんだろうなでおしまいです。しかし裏山の六甲山に生えていますよと言われては、自分が認識できている草花の数がいかに少ないかを痛感させられました。
- 葉が同じ五枚でも、ゴヨウアケビという種があります。こちらは花が赤紫で、葉の縁が荒いノコギリ状になっています。